大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(ラ)406号 決定

家庭裁判所が相続人捜索の公告をなし、所定の期間内に相続権の主張があつたときは、家庭裁判所は一応これを受理すべきものである。これは、相続財産が国庫に帰属する効果の発生を一応阻止するに止り、これについての家庭裁判所の審判は何ら権利関係を確定するものでないので、所定の期間後の相続権の主張のように明白に不適法な主張でない限り、家庭裁判所はこれを受理すべきものである。右主張を不当とし、相続人であることに争のある場合は、訴訟によつて決するほかないものと考えられる。本件記録によれば、原裁判所が昭和三十五年七月十一日被相続人細合吉次郎の相続人捜索公告をなして、相続権主張の催告をなし、抗告人が申出の期間内である昭和三十六年六月二十四日右被相続人の相続人であることを主張したこと、被相続人細合吉次郎が昭和二十二年十月二十三日死亡し、当時その直系尊属、配偶者、直系卑属はすべて死亡して生存せず、その姉なかの子で被相続人の兄細合久吉の養子となつた抗告人その他兄弟姉妹の子が数人生存することが明らかである。右相続開始の当時は民法の応急措置法が施行されており、同法は、相続は旧民法の遺産相続の規定によること、直系卑属、直系尊属及び兄弟姉妹がその順序により相続人となることを規定しているので、直系卑属については代襲相続が認められるが兄弟姉妹については代襲相続を認めていないことが明らかである。従つて、抗告人は民法の応急措置法では被相続人細合吉次郎の相続人ということはできない。然しながら、新法附則第四条は「新法は、別段の規定のある場合を除いては、新法施行前に生じた事項にもこれを適用する。但し、旧法及び応急措置法によつて生じた効力を妨げない」と定めており、兄弟姉妹の代襲相続については同附則で別段の規定をしていない。従つて、応急措置法時代に兄弟姉妹のうち一人が生存していて相続が行われた場合或は相続人のあることが明らかでなく旧民法第千五十一条ないし第千五十九条の手続を経て相続財産が国庫に帰属してしまつた場合は、旧法及び応急措置法による効力を生じたものとして、新法を適用する余地がない。本件記録によれば、昭和三十四年十二月二十一日に至つてはじめて相続財産管理人が選任され、それまで何らの手続も行われなかつたことが明らかであり、このように相続人のあることが明らかでなくとも右手続を行つていないうちに新法が施行されたときは、右附則第四条により、新法が適用されるものというべきである。新法によれば、第八百八十九条により第八百八十八条が準用され、兄弟姉妹がすべて死亡しても代襲相続を認めるべきであるので、前認定の事実の下においては、抗告人は被相続人細合吉次郎の相続人であると解せられるのである。然らば、前認定の相続権の主張は、明白に不適法のものとはいえないので、原裁判所はこれを受理すべきものというべきである。よつて、抗告人の相続権の主張を不適法として受理しない趣旨でなされた原審判を取消し、右趣旨の裁判として主文のとおり決定する。

(千種 脇屋 太田)

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